あめりか便り(26) サンフランシスコのCable Car
April 6, 2010/CHIeru ブログ
アメリカは効率の良さを優先する国だと思います。
例えば、安くて早いファーストフードはアメリカが発祥の地ですし、テレビCM一つをとってみても費用対効果を数値で明確に主張するものを多く見かけます。
しかし、ふと街角に目を向けると、単なる効率だけでなくアナログのよさもまた大切にされているのだということに気がつきました。
これは、先日旅行をしたアメリカ西海岸・サンフランシスコ(San Francisco)を走るCable Car(ケーブルカー)。
何でもコンピュータ制御されがちな時代に、Cable Carの運転手さんは、2本のバーとブレーキペダルを器用に扱い、車両の速度を調整していました。車両後部が定位置の車掌さんもまた、重要な役割を担います。乗客の切符を確認するほか、下り坂では後部ブレーキを力いっぱい引き、鐘を鳴らしてCable Carの通行を周りに伝えるのです。
Cable Carは、サンフランシスコの中でも特に急な坂道の多いところを走ります。
坂を登りつめ、一呼吸おくと、Cable Carは「ガー」とも「ザー」とも言われぬ音と共に下り始めます。その瞬間は、まるでジェットコースターで頂上にたどり着いた時の緊張を思い起こします。
もちろん、下り坂の途中にも停留所があります。
ブレーキを引き続ける運転手さんと車掌さんが、更に体重をかけてブレーキを引ききったと思った途端、Cable Carはつんのめることもなく自然に停車しました。この「上がる・下がる」を何度となく繰り返し、Last Stop(終点)に着くのです。
終点に着くと、やはり人の力で車両を方向転換させます。
円の中に入れられたCable Carは、運転手さんと車掌さんの体で力いっぱい押され、たった今走ってきた方向に向き直りました。最後に復路まで押し出されて完了です。
ところで、Cable Carが走る線路は、いわゆる一般道に設置されています。自動車もバスも走りますし、自転車も人も横切ります。ですから、Cable Carが停車すれば、周りは全てストップすることになります。
しかも、この停車時間は、日本のバスなどと比べるととても長い。
乗客が降り終わるのを待ち、走ってくる人を待ち、安全な位置にいるかを確認してから出発するのですからしかたがありません。ちなみに、"通"の間では、先頭車両に乗り、体を半分乗り出して立つのが最高だといわれているようですが、乗客を落とすわけにはいかないので、これもまた運転手さんの心配のタネのようです。
一方で、線路の両脇にはアパートなどの住宅地もたくさん見かけます。
朝から夜遅くまで走るCable Car。
「ガー、ザー」というケーブルの音だけではなく、「カンカンカン」、「カーンカーンカーン」という二種類の鐘の音が、あたりに響きます。特に雑音の少ない夜は、響き渡るのです。
普通に考えれば、ジャマでウルサイ存在のはず。
しかし、それでもCable Carは、サンフランシスコの人々に愛され、大切にされているようです。
夜の10時過ぎ。夜景を楽しもうと乗ったCable Carには、見るからに仕事を終えて帰る若い女性の姿がありました。始発となる停留場で先の一台をやり過ごし、夜景が見渡せる特等席に座った彼女は、「光る」街を終始見つめていました。Cable Carに揺られることで、一日の疲れを癒しているようです。
咳き込む私にアメをくれた親切なご婦人や、乗り込んできた子どものために席を譲り合う人たちとも、このCable Carの中で出会いました。
そこから見える景色の良さはさることながら、このアナログ的な温かさが楽しくて、私は、5回も6回もこのCable Carに乗ってしまいました。
<ご参照>
■ The San Francisco Cable Car Website
http://www.sfcablecar.com/
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