第1回:外国語活動がめざす、真の姿を知ってほしい
January 22, 2009/特集(/interview)
小学校の「外国語活動」、いよいよ全国でスタート!
~いま、小学校、教育現場、そして社会は何をすべきか~
大幅に改訂される、新・学習指導要領。国語科、算数科などの各教科で学習内容が増え、授業時数も増えるなど、これまでの学習指導要領から大きく様変わりする。その中でも、大きな関心を集めているのが、小学校高学年における「外国語活動」の新設だ。「外国語活動」ではどんな授業が行われるのか、子どもたちはどんな力をつけるのかと、教育関係者だけでなく世間も注視している。
そこで、文部科学省初等中等教育局教育課程課・教科調査官の菅正隆先生に、独立行政法人メディア教育開発センター・准教授の堀田龍也先生がインタビュー。第1回は、「外国語活動」の目的から、教師の役割、授業の方法、そして指導の心構えなどをお聞きした。
その模様を、1月・2月・3月の特別インタビューとして、全3回に分けてお送りする。
最大の目的は、コミュニケーション能力の育成
堀田龍也・准教授(以下堀田):学習指導要領が改訂され、小学校で「外国語活動」が始まります。海外では小学生でも英語を習うのが当たり前になっていますから、ようやく日本でもという感じですね。
菅正隆・教科調査官(以下菅):昭和61年に当時の臨時教育審議会が小学校での英語教育の検討を答申してから22年、ついにスタートを切ることになります。しかし、最初に断っておきたいのですが、「外国語活動=小学校で英語を学ぶ」ではありません。中学校のような英語の授業が小学校でも始まるのだと誤解している方が、とても多いのです。
たとえば、中学校で習っている英単語や文法を、前倒しして小学校で学習すると思いこんでいる人の話をよく聞きます。マスコミでは、さも英会話学習が始まるかのような報道をしていますし、保護者の方々は、小学生で英語を話せるようになると思っている。英会話教室のような教育が、小学校で始まると早合点しているのですね。
しかし、こういったイメージは、全て誤解です。冷静に考えれば、非現実的であることがわかるはずです。小学校の先生は現在、全国に約40万人おられますが、そのうち英語の教員免許を持っているのはわずか3%。英語の専科教師がいる中学校や高校のような授業を、今すぐ小学校でやるのは不可能です。小学校の外国語活動は、中学校や高校での英語教育とは違うのだということを、まず理解してほしいと思います。
そもそも外国語活動は、小学生の英語力を向上させるのが目的ではありません。英単語や表現をただ覚えるのが目的でもありません。最大の目的は、コミュニケーション能力の育成をめざすものです。
堀田 外国語活動の学習指導要領にも、「コミュニケーション能力」を育むことが明記されていますね。
菅 現在、学校で頻発しているいじめや校内暴力は、コミュニケーション能力の低下が原因の一つと言われています。言葉を上手に使えず、コミュニケーションを上手にできないが故に、傷つけ合う事態になっています。そのため今回の新しい学習指導要領でも、「言語力」の育成を重点目標に掲げています。言葉の豊かさや大切さをしっかりと教え、人とどう交わるのか、どう関わるのかというコミュニケーション能力を育てていくのが、現在の重要課題です。それは日本語だけに限りません。グローバリズムの時代ですから、外国語でコミュニケーションする力も必要になってきます。こういった背景から、外国語活動が始まったわけです。
英語はあくまでもコミュニケーションのためのツール
堀田 コミュニケーション能力を育てるために、外国語活動ではどのような授業を行えばよいのでしょうか。
菅 たとえばある研究開発学校では、6年生の子どもが「世界の子どもたちの生活時間を学ぶ活動」を行っています。日本の子どもが学校に行く頃、中国の子どもは起きたばかりで、ヨーロッパの子どもはまだ寝ている、ということを教材から学ぶのです。すると、ある男の子が「世界には時差があることを感じました」と発言したんです。「気づいた」ではなく、「感じた」と。知識として時差があることを知ってはいたけれど、それをこの授業で実感できたのです。また、「クラスの友だちの生活リズムがわかった。実感できた」という声も聞きました。“What time do you get up?”などのコミュニケーションを行うことで、「僕の生活リズムと違う」と実感できたのです。これこそが、外国語活動に期待することなんです。
堀田 外国語「活動」という名称の意味が、ここにあるんですね。「活動」を通して、相手のことを知り、他国のことを実感し、コミュニケーションのおもしろさがわかってくるんですね。
菅 人とコミュニケーションしたくない状態で、単語や表現を覚えても意味がありません。「伝えたい」という気持ちがあってこそ、学んだ単語や表現が定着するのです。これは当たり前の話ですよね。外国語活動において、英語はあくまでツール。 英語を使ってコミュニケーションを重ね、子どもの興味や関心を伸ばしていく。興味や関心が高まれば、「こういうことを英語で言いたいんだけど、どう言えばいいんだろう?」と自分で学び始めるようにもなります。そうすることによって、中学校に上がったときに、「英語嫌い」になることもなく、英単語や表現などを積極的に吸収できる。子どもたちが将来学び、生きていくための「素地」をつくるのが、外国語活動なのです。
小学校の先生方は、今のままでいいのです
堀田 「英語の発音が苦手だから」「英語の教え方がわからない」と、外国語活動の開始を不安がる先生も多いようですね。
菅 不安になる必要はまったくありません。不安を感じるのは、先生方が「外国語活動=英語を教える」と誤解しているからでしょう。外国語活動は、英語を教えるのではありません。子どもたちに、コミュニケーション能力を身に付けさせるのです。特別なことではありません。今でもすでに、先生方はクラスマネジメントや日々の触れあいを通して、コミュニケーション能力を教えていますよね。同じことを、外国語活動を通してやっていただければいいのです。英語が苦手ならば、音声CDやデジタル版等のICT教材を活用すればいい。気楽に、無理せず、トライしてください。
私も全国各地の学校を見てきましたが、先生たちは経験を積めば積むほど、指導力もどんどん伸びます。気負わずに、まずやってみることが大事。幸い、新しい学習指導要領は完全実施までに2年間の移行期間がありますから、少しずつやっていけばいい。これは私見ですが、今年度から35時間フルにやらずとも、少しずつ時間数を増やしていってもいいと思います。
【「外国語活動」導入までの道のり】
- ●昭和61年4月:臨時教育審議会 答申
- 英語教育の開始時期について検討を進めると、答申。小学校での英語教育の検討開始。
- ●平成8年7月:第15期中央教育審議会 第一次答申
- 「総合的な学習の時間」や特別活動などで、国際理解の一環として、英会話などに触れる機会や外国の生活・文化に慣れ親しむ機会を持たせるようにと提言。
- ●平成10年12月:小学校学習指導要領
- 「総合的な学習の時間」で、国際理解学習の一環として外国語会話等を行うことが可能に。
- ●平成11年5月:小学校学習指導要領・解説
- 「総合的な学習の時間」で外国語会話等を行う場合の目的や内容を提示。中学校の前倒しではなく、外国語に触れたり外国の生活・文化に慣れ親しむような体験的な学習を行うとされた。
- ●平成13年4月:文部科学省、「小学校英語活動実践の手引」を発表
- 授業実践例の指針が示され、小学校での英語活動が活発化。
- ●平成20年3月:新・学習指導要領 改訂
- 小学校での「外国語活動」が新たに盛り込まれる。
【新・学習指導要領による「外国語活動」の目標】
外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。
外国語活動の目標は次の三つの柱から成り立っている。
- 外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深める。
- 外国語を通じて、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図る。
- 外国語を通じて、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませる。











