活用事例

関連カテゴリ一覧: 活用事例> 小・中学校> 「情報教育」と「学校図書館」の幸福な関係。

「情報教育」と「学校図書館」の幸福な関係。

静岡県静岡市立森下小学校

教材事例:ガイドブック

静岡県静岡市立森下小学校6年1組担任・司書教諭 塩谷京子先生

【ICT活用レポート】
 

学校図書館から選んだ、最適の教材

塩谷先生.jpg
塩谷京子先生

「今日の授業のねらいは、『相手が手にとって読んでくれるガイドブック』を考えること。ガイドブックは情報を読者に伝えることが目的であり、読み手の興味をひくための工夫が大切なんだと気付かせるのがねらいです」

 6年生国語の単元「ガイドブックを作ろう」の第1時間目。ガイドブックに凝らされた数々の工夫を学ばせるには、ホンモノのガイドブックに触れてみるのが早道だ。事実、国語の教科書には世間に流通しているガイドブックが例として載っている。しかし、塩谷先生は敢えて「プロ」が作ったガイドブックを教材とせず、学校図書館に保管されている、ある"教材"を活用した。

「今からみんなにガイドブックを配ります。これは森下小の先輩たちが、過去に作ったモノです。班内で回し読みして、どんな工夫がされているか、どんな工夫が効果的か話し合ってください」
「写真を使って説明すると、文字だけよりもわかりやすい」「色を使い分けて、伝えたい情報を目立たせるといいね」。子どもたちは次々とガイドブックの工夫点を見つけ出した。
 

先輩たちの作品を分析.jpg
 先輩たちの作品群を分析し、ガイドブックのイメージを膨らませ、要件をあぶり出す。さらにこれをお手本に、より良いモノを作っていく。

「プロが作ったガイドブックはレベルが高すぎて、子どもたちは内容に目を奪われて工夫点に注目しづらいのです。その点、先輩たちの作品ならレベルも似通っていますし、ガイドブックの内容も『校区内の交通安全』という身近なテーマ。ガイドブックの基礎を学ぶ教材として最適です」
実は、すでに子どもたちは総合的な学習の時間で「校区内の交通安全」に関する調べ学習を実施済み。これから制作するガイドブックのテーマも、先輩たちと同じ「校区内の交通安全」。そのため、先輩たちの作品を分析しやすく、同時にこれからどんなガイドブックを作ればいいかというイメージも膨らませやすいのだ。
最適な教材を使った効果は、如実に表れた。塩谷先生が「ガイドブックの要件は何?」と尋ねると、大見出し・小見出し、図や写真、文字や色、目次と即答したのだ。筆者も仕事でガイドブックを制作したことがあるが、小学6年生がこれほど正確にガイドブックの極意を即座に見抜くとは......と驚かされた。

 

実物投影機を活用1.jpg
 実物投影機を使って、気付いた工夫点を発表。「ここに目次を入れてあるのが良いと思います」と、指し示したりズームしたりして解説するなど、子どもたちはごく当たり前にICT機器を使っていた。

「こういったガイドブックの基礎......私は『外枠』と読んでいますが、外枠をおさえないまま制作を始めても学びになりません。極論すれば、ガイドブックそのものの完成度はそれほど高くなくてもいい。重要なのは、外枠をしっかり理解し、作品に反映しようとしているかどうか。評価の際にもそこを重視します。他の教科や単元でも、外枠重視の指導と評価を行っています」

 先輩たちの作品を教材にする効果は、まだある。「自分たちのガイドブックも図書室に保管され、後輩たちの教材になるんだ!」と自覚することで、読者を意識した制作姿勢も培えたのだ。「読者を意識しなさい」と呼びかけるだけでは、こうはいかない。
学校図書館の財産は、一般書の蔵書だけではありません。年々蓄積されて、後代に受け継がれていく子どもたちの作品群も、貴重な教育資産。この資産が、子どもたちの学びを向上する手助けとなるのです」

 

子どもの頭の中に、図書館が作られていく

辞書1.jpg
辞書2.jpg
 子どもたちの手元には、常に辞書がある。新しい言葉や疑問に遭遇すると、すぐに辞書を引く習慣が身についている。付箋を使って自分なりに整理分類している子どもも数多く見られたdd>

 塩谷学級の子どもたちを見ていて、頭に浮かんだフレーズがある。「打てば響く」。「一を聞いて、十を知る」。それほど子どもたちは塩谷先生の問いかけや指導を即座に理解し、時には塩谷先生の期待以上の反応を見せていたのだ。
「私も、子どもたちの成長ぶりに日々ワクワクドキドキしています(笑)。指導の秘訣ですか? 子どもたちの学びを"点"で終わらせず、点と点をつなげて面や線にしていることでしょうか」
たとえば今回の単元も、意図的に総合的な学習の時間とリンクさせ、教科の枠を越えた横断的な学びにしている。また塩谷学級には小学3年生から中学3年生までの教科書が常備されており、「今学んでいることの土台を、3年生で学んだね」「中学1年生では、こういう学びに発展するんだよ」と、実物投影機で教科書を映し出し、学びの過去・現在・未来を連続的にイメージさせているという。
「子どもたちの頭に、"引き出し"を作ってあげるんです。さまざまな学びを自分なりに整理して頭の引き出しに格納し、時々ひっぱり出しては新たな情報を追加し、整理し直す。その機会を、意図的に作っているのです」
もちろん「外枠」重視の指導も、子どもたちを鍛えている。単元の基礎であり本質である「外枠」は、応用が利く。国語で学んだことを社会で、社会で学んだことを算数で活用させる。こういった指導を日々行うことで、子どもたちの学びは加速度的に深まり、学び同士がリンクする。
まさに、これは図書館なのだ。さまざまな学びを整理分類し、活用し、より便利なように再分類する。子どもたち一人ひとりの頭の中で、日々図書館が構築されていると言っていいだろう。

「教育の力って、すごいですね」。インタビューを終えて思わず感嘆のため息を漏らすと、塩谷先生は笑って付け加えてくれた。
「だからこそ教師はもっと勉強しなくちゃと日々感じています。自分が知らないことは、子どもに教えられませんからね」

【富山大学人間発達科学部准教授 高橋純先生の授業解説】

常に「学びのステップ」を意識しているのがポイントだ。ホンモノ体験が大事であることに惑わされれば、プロのガイドブックを使ってしまうだろう。しかし先輩の作品を参考にさせている。また、まずは「外枠」を重視する指導や、教室に小3~中3の教科書を置くことも、学びのステップが何であるかを重視しているからだろう。

 


PAGE TOP


Copyright © 2009 CHIeru Co.,Ltd. All rights reserved.